製造業の変革が不可欠な
「変化の時代」へ
その一方で、グローバル化する市場での競争要因の変
化にも対応しなければならない。よりよい製品を安価に
提供するだけでは、海外勢に太刀打ちすることは難しく、
製品だけではなくその周辺のサービスも含んだ、トータ
ルな顧客体験の向上が求められている。
加えて、新たな技術革新を積極的に取り入れていく必
要もある。デジタル技術を活用したビジネス変革が、あ
る 日 い き な り 従 来 の 競 争 原 理 を 覆 す 可 能 性 も あ る か ら
だ。特にビジネスのデジタル化とそこに寄与するシステ
ムのクラウド化は、ここまで述べてきた環境変化に対し
ても大きく影響する重要な施策だが、システム面だけで
はなく組織や文化の変革にも深く絡むため、多くの企業
が試行錯誤している状況だ。
次のページからはまず、製造業が取り組むべき主要な
課題に対して加速すべき方策と、そこに対してクラウド
の活用がどのように貢献し得るかについて考えていく。
デジタル技術を活用した新規プレーヤーの市場参入や、
消費者行動の変容に伴う市場そのものの劇的な変化、さら
には地球温暖化に伴う異常気象やグローバルな政治の不
透明感など、先を読むことが難しい時代になった。1990 年
後半に米軍が軍事用語として提唱した「 VUCA
※ 1
」は、既
に時代のキーワードそのものと言っても過言ではない。
製造業も、この流れから逃れることはできない。もは
や「 品質の高い製品を安価に提供すれば必ず売れる 」と
いう時代ではなく、激変する環境に素早く適応しながら、
ビジネスのかじを取り続けなければいけなくなっている
が、いまだ体制が追いついていないと感じている企業が
多いことだろう。
実際、製造業が取り組むべきチャレンジは多岐にわた
る。まず、多くの製造業が現実的な問題として直面して
いるのが、少子高齢化に伴う労働力人口の減少とスキル
の空洞化だ。
製造業のチャレンジと
クラウドが支えるビジネス変革
製造業が取り組むべきチャレンジは多数あるが、アマ
ゾン ウェブ サービスジャパン( AWS ジャパン )で製造
企業のサポートを行ってきた布目 拓也氏は、「 不確実で
変 動 す る ビ ジ ネ ス 環 境 に 柔 軟 に 対 応 し て い く 手 段 と し
て、クラウドは最適な特性を持っています。製造業でも、
システムやデータをクラウド化することで直接的・間接
的に貢献できるユースケースは増えています 」という。
第 1 は「 新しい利益源泉の創出 」だ。個々に独立した製
品を製造・販売するだけではなく、「 つながる製品 」「 ス
マートプロダクト 」へとかじを切り、これまでの製造業
にはなかった新たな価値を追求していく必要がある。
「 これからの市場競争力の源泉として広く意識されて
いる通り、" つながる製品 " から情報を収集することで、
顧 客 満 足 度 を さ ら に 高 め ら れ る 新 た な サ ー ビ ス の 創 出
や、次世代製品開発へのフィードバックなどが可能にな
ります。これを競合他社に先駆けて推進していくために
勝ち残るためのチャレンジに
クラウドはどう貢献するか
多くの課題に直面する製造業
※ 1 Volatility( 変動性 )、Uncertainty( 不確実性 )、Complexity( 複雑性 )、Ambiguity( 曖昧性 )を指す
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社
技術統括本部
エンタープライズ・ソリューション本部
ストラテジック製造
Division
部長
布目 拓也氏